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「おためし地域留学」 in 北海道平取町


「おためし地域留学」とは?

「おためし地域留学」は、「地域みらい留学」を推進する地域・教育魅力化プラットフォームが全国100以上の地域と築いてきたネットワークを活用し、地域の学校・自治体・ローカルプレーヤーと連携して初めて実現できる、”ここでしか得られない本物の体験”を提供するプログラムです。

今回ご紹介するのは、2024年10月12日(土)-14日(祝月)の2泊3日で実施した北海道平取町でのプログラム。参加してくれたのは、東京・神奈川・千葉・埼玉・大阪・兵庫から、中学3年生6名、中学2年生4名の10名です。3日間の様子をレポートします。

また平取町役場の皆さんがプログラム当日の様子を記録した動画を制作してくれましたので、こちらも合わせてご覧ください。

DAY1「おためし地域留学 in 平取町」

1日目のメインは、平取を流れる沙流(さる)川流域に色濃く残るアイヌ文化の体験コンテンツです。アイヌ文化の中心地である「二風谷(にぶたに)コタン」を舞台にアイヌの食や住環境などの暮らしを体験しました。

12:00 新千歳空港で集合/バスの中で自己紹介

北海道の玄関口である新千歳空港は、3連休だったこともあって混みあっていましたが、平取町の役場の方や平取高校の高校生が駆けつけてくれ、全国各地から訪れる10名の中学生をお出迎えしてくれました。

空港から平取町までは、役場が用意してくれたバスで町に向かいました。空港から町までは、約1時間程度かかるため、その時間を使って自己紹介ワークを行い、お互いのニックネームや出身地、参加した背景について相互理解を深めました。

14:00~15:30 アイヌ伝統料理・シトづくり体験

現地に到着後、地元の公民館でアイヌの伝統料理「シト(イナキビや米粉を使う団子のこと)」づくりを体験しました。地元のお母さん方に教えてもらい、アイヌの謡いをみんなで歌いながら杵と臼でキビを粉にするところから始め、粉上のキビ粉を使って団子を作りました。

実際に手でこねてみると、結構弾力がある生地で、参加した生徒たちは「結構力がいるね!」などと一生懸命に生地をこねていました。生地作りを体験したあとは、団子状にしたシトを湯がいて食しました。

イナキビと突く
突いたイナキビをこねる

15:30~17:00 アイヌ伝統の家・チセ修復のお手伝い

アイヌ伝統の食を体感した後は、二風谷コタンにあるアイヌ伝統の家「チセ」の修復をみんなで手伝いました。二風谷コタン内には、復元されたチセが複数存在しており、アイヌ工芸作家の皆さんが木彫りや刺繍などの作業を輪番で行い、訪れた方々との交流の場ともなっています。

当日は、チセの伝統技術の伝承者の方や平取町アイヌ文化振興公社の皆さんを中心に、全国から古民家再生の職人の方が訪れていました。チセの材料となる、ヨシという植物を束ね、束ねたヨシを屋根や周辺の壁として設置していきます。

今回修復していたチセには、大きなヨシの束が3000束以上必要だということでした。生徒たちは、職人さんの話を聞きながらヨシの束をつくる工程をお手伝いしました。

チセ(家)の説明を聞く
チセを一緒につくる

平取町に到着してから動きっぱなしだったため、お手伝いした後は長めの休憩時間を取って二風谷コタンにある広場で休憩しました。休憩中、中学生と高校生が混ざり合って、「だるまさんが転んだ」などをして親睦を深めていました。このタイミングになると、中高生ともに緊張もほぐれて自然体で交流できるようになっていました。

だるまさんが転んだ!

17:00~19:00 アイヌ伝統料理で夕食

たくさん活動したのでこの日は早めの夕食。夕食は、アイヌ伝統の料理をお弁当の形でいただきました。また、地元の方のご厚意でユク・オハウというアイヌのお味噌汁(ユク=鹿、オハウ=お汁)も作っていただき、アイヌ伝統の味をみんなで堪能しました。

アイヌの料理は、自然の恵みをふんだんに取り入れたもので、普段の生活で口にすることが少ない山菜や野草などを使ったものもあり、ここでしか食べることができないものを、一同珍しがりながら美味しそうに食べてました。

アイヌ伝統古民家で夕食

食事のあとは、宿に移動して1日の振り返りをして終了。ゲストハウスを1軒貸し切って、一つ屋根の下でプチ共同生活をすることで、寮生活などの疑似体験をしながら2泊過ごすことになります。

夜の振り返りの一コマ

DAY2「おためし地域留学 in 平取町」

8:30~9:00 義経神社参拝

2日目は朝食を食べた後、移動して義経神社に参拝しました。この神社は全国にも数ある源義経の伝説にまつわる土地の一つで、平泉で生き延びた義経がピラウトゥル(ウとルは小文字)平取に辿りつき、アイヌと互いの文化を共有したとするもので、ハヨピラ(神社の丘づたい東方)という聖地にそれを祀ったことが起源です。

実際に神社に行くと、たくさんのドングリや栗の実が地面に落ちているなど、豊かな広葉樹の森に囲まれたところで、とても気持ちのいい風が流れていました。

豊かな森に囲まれた神社
みんなで記念写真

9:00~10:00 平取高校訪問

神社に行ったあとは、平取高校を訪問し高校見学を行いました。高校には校長先生がお出迎えし、校舎の中を案内しながら説明してくれたり、資料を使って平取高校の概要や特徴を説明してくれました。

校長先生から高校の説明

平取高校は、学校のカリキュラム全体でダイバーシティ(多様性)とインクルージョン(共生・協働)を学び、それらを社会や組織で推進し、そこで活躍する人を育てるということをスローガンに、アイヌ文化を学ぶ授業や探究活動に力を入れています。

その一環で来年度から本格的に、希望者全員に自己負担なしでハワイ・マウイ島での海外研修プログラムも開始する予定です。アイヌと同様に先住民の歴史が深いハワイとの交流を通して、先住民族、国際理解、英会話を学ぶことが狙いです。

11:00~12:30 トマトクラブーお料理アクティビティ

高校訪問の後は、平取高校のトマトクラブ(料理部)が考えたオリジナルレシピを基にみんなで昼食を作りました。トマトクラブは、調理コンクールや地域イベントなどに出品。平取町食育推進事業と連携し、小学校へ食育指導をしたり、給食の献立を考案したりするなど、地域に還元する活動を行うなど、精力的に活動している部活動です。

みんなでつくる!①
みんなでつくる②

今回作ったメニューは平取名産のトマトなどをふんだんに使った「ビラタコライス」。ここから地元の中学生も合流してアクティビティを実施しました。高校生が中学生をリードしながら、野菜を切る班やひき肉を炒める班など役割分担をし調理を進めていきました。料理を作っている間は、自然と会話が生まれ、みんなで楽しく過ごしていました。

約30人分を用意するという大仕事でしたが、どのプレートもきれいな仕上がりで、味も抜群!一同「めちゃくちゃ美味しいね!」と言いながら食べていました。

ビラタコライス完成!!
みんなでいただきます!

13:00~13:30 アイヌ文化博物館見学

午後に入るとまず、アイヌ文化博物館に行き、学芸員さんにアイヌ文化の全体像を教えてもらいました。博物館には、アイヌの歴史が分かる展示や当時の生活に関する展示がたくさんあり、普段は見ることができない貴重なもので溢れていました。

短い時間での見学でしたが、前日に関わった食(シトづくり)や住(チセ)、それにちなんだ生活のことを、展示や学芸員さんの話をもとに知ることができた時間でした。

アイヌの文化を聞く

13:30~15:00 平取町フィールドワーク

アイヌ文化博物館から出た後は、2チームに分かれて平取町の魅力をよりよく理解するフィールドワークを行いました。1つのチームはアイヌ文化の理解を更に深める「アイヌ紋様の木彫ワーク」。もう1つの班は、平取の特産であるトマトを栽培する「トマト農家への訪問」です。

アイヌ紋様の木彫を行うチームは、二風谷の工芸家 貝澤さんの下で木のコースターにアイヌ紋様を彫り込む体験を行いました。アイヌ紋様は一つひとつの紋様に意味があり、その組み合わせによって作られているそうです。参加したみんなは真剣に紋様を彫り込んでいました。

アイヌ紋様を学ぶ
みんな真剣!

トマト農家を訪れたチームは、地元でトマト農家を営む田村さんのところにお世話になりました。トマト収穫の最盛期は終わっていましたが、まだ収穫できるトマトをみんなで手分けして収穫しました。トマトは、熟れ過ぎる前の少し緑がかった状態で収穫するらしく、それを聞いた参加者はに「へー!」と驚いていました。

その後、別の場所で植えていたサツマイモの収穫もさせていただきました。掘ってみると見たこともない大きなサツマイモがたくさん掘り出せて、一同テンション高く、普段あまり触れない土を触りながら楽しそうに収穫をしていました。

トマト栽培を学ぶ
トマトをもぎる
サツマイモが大きい!

15:00~16:30 二風谷コタンDAYーチーム対抗スタンプラリー!

フィールドワーク後は、二風谷コタンで実施していたイベントのスタンプラリーをしました。チーム対抗で、全てのスタンプを一番早く集めたチームが勝利というルールでチーム対抗戦を実施し、同じチームの中高生は一致団結して我先にと、コタンの中を駆けまわっていました。

17:30~19:30 中学生・高校生・地元の大人みんなでBBQ!

日中の動き回ったあとは少しゆっくり過ごしながら、1日一緒に過ごした地元高校生や地元中学生に加え、町の大人の方も何人か合流してBBQをしました。平取の名産である平取牛や豚肉をはじめ、北海道名物のジンギスカンなど美味しい食材をたくさんいただきました。

参加者は地元の中学生とも仲良く過ごし、またずっと一緒にいてくれている高校生とは1日目の緊張した表情がうそだったかのように、馴染んで話をしていました。

みんなでBBQ!

BBQが終わり、宿に戻った後は最後の夜を惜しむように、広間で集まってみんなで話をし、さながら大家族のような雰囲気の中で思い思いに時間を過ごしました。

DAY3「おためし地域留学 in 平取町」

9:30~11:00 3日間の振り返り

最終日は、3日間の振り返りを行い、印象に残ったことや町や高校のことで魅力に感じたことなどをディスカッションしてまとめていきました。

参加した中学生からは、「平取の人のよさをとても感じた」「高校生の皆さんが優しくて友達になれた」「自然が多くて魅力的なところだった」「アイヌ文化をもっと知りたいと思った」などの意見が出ていました。

最後個人の感想や気持ちを発表する場面では、「平取町や高校で学ぶと優しい人たちと楽しく生活できると思った」や「豊かな自然にふれながら過ごせることが魅力だと思った」などを、受け入れてくれた高校生に向けて発表していました。

3日間の思い出を書きだす
思い出を分かち合う
3日間の気づきを共有し合う①
3日間の気づきを共有し合う②

振り返りのあとは、みんなで昼食を食べ、全員で集合写真を撮って全日程が終了。最後は、仲良くなった高校生との別れを惜しみながら解散となりました。

3日間の最後に

今後も全国でプログラムを展開予定です。地域への一歩を踏み出してみたい!中学生のみなさんのご参加をお待ちしています。

<一般財団法人地域・教育魅力化プラットフォーム>
「意志ある若者にあふれる持続可能な地域・社会をつくる」というビジョンを掲げ、2017年3月に島根県に設立した教育事業団体です。

日本全国100高校以上と連携しながら、中学卒業後に地域の枠を越えて生徒一人ひとりの夢や価値観に合った地域・学校で1〜3年間過ごすことができるシステム「地域みらい留学」をはじめとした、教育事業や地域活性モデルをつくり続けています。